問題1
以前、高校の教え子たちと話していて「1」ふと気づいたことがある。疑問に感じることの幅の広さ、疑問の大きさの違いだ。「どうして?」「なぜ?」という問いは、人間にとって、だれもが持ち合わせるごく当たり前の心のはたらきだと思ってい
た。しかし実際には、その広がり、対象範囲が人によってまったく異なるのだ。
(中略)
疑問とは、「興味の現れ」にほかならない。なにごとにも無関心な生徒は、会話もじつに淡白である。他者とのコミュニケーションにも興味がない。興味がないから、疑問も起きてこない。
私はというと、物心ついたときから好奇心旺盛な子どもであった。「このおもちゃの内部はどうなっているんだろう?」そう思ってばらばらに分解しては、元に戻せなくて泣いていたものである。
自分を取り巻く社会で起きるあらゆること、たとえば学校の授業で先生が教えたり、指導する内容にだって「なんで?」と思っていいのだ。会社の上司の指示にも「なんで?」と思っていい。親の躾にも「なんで?」と思っていい。問題は、「なんで?」だけで思考が終わってしまうことだ。「2」それではダメだ。というのは、「なんで?」だけで終わってしまうと、その後に「反抗」「反感」の感情が心に渦巻いてしまうだけだからである。「なんで?」に始まり、そこから「どうしてそうなるの?」「本当にそうなの?」と、自分なりに考えを極めていく作業が大切であり、そこに成長の鍵がある。
(山本博『持続力』による)
物心ついたとき:世の中のことが何となく分かってきたとき
感情が心に渦巻く:ここでは、感情で心が乱れる
考えを極める:ここでは、徹底的に考える
1. 「1」ふと気づいたこととは、どんなことか。
どんなことにも疑問を持たない高校生が増えている
高校生の疑問の範囲が狭くなっている。
疑問の対象は世代によって異なる
疑問の範囲は人によって異なる
2. 「2」それではダメだとあるが、なぜか。
反発する気持ちを表現しなくなるから
反発する気持ちが生まれるだけだから
疑問が大きくなってしまうだけだから
疑問を持たなくなってしまうから
3. この文章で筆者が最も言いたいことは何か。
疑問に感じたことを深く考えることが成長につながる。
あらゆることに疑問を持つことが考えを広げる。
疑問を探し続けることが成長の鍵である。
疑問を持つことは「興味の現れ」である。
問題2
幸福は人生の目標である。それだけに一体どういうものが「幸福」なのか知るのは、それを追求する前提として深刻な課題であると思う。あるとき、若い人が、私に向かって「幸福というのはあるのか」と深刻そうな顔をして聞いたことがある。
彼は人間の欲望というのは無限に続くものであるから、幸福感まではなかなか到達しないのではないかというのだ。なるほどそういえるかもしれない。人間が進歩する動物であるならばなおさらのことだ。
でも、私は幸福は存在すると思っている。趣味に例をとっても、ある人は野球することをあげ、他の人達は読書や映画、音楽とそれぞれに主張する。登山や魚釣りという人もいるだろう。このように趣味は人によってさまざまだが、同様に幸福についても人によっては考え方がまちまちだと思う。
「幸福とはどのようなもの?」と聞かれたら「裕福になること」と答える人もいるのだろう。また、「社会的な地位に到達する」のを幸福だと考えているかもしれない。逆にそのような裕福とか社会的地位を否定して、「心の豊かな人」になることが幸福だと思っている人もいると思う。思考や感情、さらには生活様式さえ異なる人間のことだ。幸福についての考え方に、差があってもいいのではないか。ただ同じく裕福を主張しても、多くの人の幸福を願って慈善事業に協力する人もいれば、一方には「がめつい奴」の看板を背負って生きてるような人もいる。他人になんといわれようと、その人はそれで結構幸福なのだ。人間は自分のために生きるのだから、他人に迷惑さえかけなければこれでもいいのである。
しかし、私はスタートの段階ではそれでもいいが、いつまでもそのままの考えから進歩しないのでは困ると思う。私自身としては、別な生き方をとる。
幸福というものについて、これだといい切れる考えはまだ私も持っていないが、私は「会社での仕事も楽しく、家庭での生活も楽しい、つまり一日二十四時間を楽しく過ごすこと」が幸福だと思っている。言葉はすこぶる平凡だが、この内容は非凡だと自負している。それと、自分の幸福な状態が「他人の目にも楽しく、心も楽しませる」ものでありたいとも私は思う。
(本田宗一郎『得手に帆あげて』による)
なおさらのことだ:ここでは、ますますそうだといえる
まちまちだ:それぞれ違っている
「がめつい奴」の看板を背負って生きてるような人:けちで欲張りな人
すこぶる:非常に
4. 若い人が「幸福というのはあるのか」と聞いたのはなぜか。
今まで何をしても幸福感に到達することができなかったから
幸福についての考えにはいろいろあり、何が幸福かわからなくなったから
人間の欲はなくならないので、いつまでも幸福感が得られないと考えたから
人間の欲はそれぞれ異なるので、幸福についての考え方も異なると考えたから
5. 筆者はスタートの段階ではどうすればいいと述べているか。
自分が幸福だと思えることをすればいい。
他人と同じ程度の幸福を目指せばいい。
社会的に評価されることをすればいい。
「心の豊かな人」になることを目指せばいい。
6. 筆者の目指している幸福とはどのようなものか。
会社や家庭よりも、社会全体を優先する。
一日二十四時間を、自分や家族のために大切に使う。
常に楽しい生活を送り、その生き方を周りの人に認めてもらう。
会社でも家庭でも楽しく過ごし、その姿が周りの人も楽しませる。
단어 공부:
教え子 (oshiego): student, disciple
持ち合わせる (mochiawaseru): to happen to have on hand or in stock
対象範囲 (taishouhan’i): scope, coverage, selected range
異なる (kotonaru): to differ, to vary
無関心 (mukanshin): apathetic, indifferent
淡白 (tanpaku): light, simple, plain, frank
物心 (monogokoro): awareness of things around one, ability to understand what is going on around oneself
好奇心旺盛 (koukishinousei): brimming with curiosity
分解 (bunkai): disassembly, dismantling, disintegrating
取り巻く (torimaku): to surround, to circle, to enclose
躾 (shitsuke): discipline, training, teaching manners
思考 (shikou): thought, consideration, thinking
反抗 (hankou): opposition, resistance, defiance
反感 (hankan): antipathy, antagonism, ill feeling
渦巻く (uzumaku): to whirl, to curl (smoke), to swirl
極める (kimeru): to decide, to choose, to determine
成長 (seichou): growth, grow to adulthood
追求 (tsuikyuu): pursuit, search, seeking after
前提 (zentei): preamble, premise, prerequisite
欲望 (yokubou): desire, appetite
無限 (mugen): infinity, infinite, limitless
幸福感 (koufukukan): feeling of happiness, sense of well-being
到達 (toutatsu): reaching, attaining, arrival
進歩 (shinpo): progress, advance, improvement
登山 (tozan): mountain climbing
魚釣り (sakanatsuri): fishing
裕福 (yuufuku): wealthy, rich, well-off
社会的地位 (shakaitekichii): social status, social position
生活様式 (seikatsuyoushiki): one’s lifestyle
慈善事業 (jizenjigyou): philanthropic work, charitable enterprise
看板 (kanban): signboard, billboard
背負う (seou): to carry on one’s back, to be burdend with
スタート: start
すこぶる: extremely, very much
平凡 (heibon): common, commonplace, ordinary, mediocre
欲 (yoku): greed, craving, desire
정답:
Question 1: 4
Question 2: 2
Question 3: 1
Question 4: 3
Question 5: 1
Question 6: 4
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